麻酔科医の生活マニュアル

 このマニュアルは、麻酔科研修の生活の基本をまとめたものです。

麻酔計画の立て方や、術中管理などについては、指導医が一緒に行います。詳細は、成書をご覧ください。

 「勤医協麻酔科研修の手引き 第6版」は、配布されるCD-Rに入っています。研修前に総論は読んでおいてください。

1. 朝カンファレンス

 朝8:30から手術室内の医師控え室でカンファレンスを行います。それまでに、当日の担当患者さんのもとへ出向き、就眠状態や麻酔への不安、疑問点などを伺っておくとよいでしょう。時間があれば、前日に担当した患者さんにも、鎮痛状態や何か不都合なことなどがないか、聞いておきます。問題点があれば、上級医に報告してください。

 麻酔科カンファレンスでは、その日に麻酔科で管理する全症例について、麻酔カルテを元に各患者さんの既往歴、合併症、麻酔管理上の問題点、麻酔計画などについて全員で確認をします。担当する患者さんについてプレゼンテーションをして頂きますので、カンファレンスまでには担当患者さんについて把握しておいてください。また、Nsが麻酔準備を行うための指示表(麻酔準備表)を記載し、カンファレンス終了後、麻酔カルテにはさんでコントロールルームの中央テーブルに置きます。

 麻酔科カンファレンス終了後、8:45からICUカンファレンスがありますので、ICUに移動してください。ICUカンファレンスでは、当直医から日中ICU担当医、各科主治医への申し送りが行われます。事前に各患者のカルテ、経過表に目を通しておくと、カンファレンス内容が理解しやすくなります。

2. 麻酔カルテ(黄色いファイル)

 手術前日の午前中(月曜手術症例は土曜の午前中)に術前診察を通った後、手術室コントロールルームに搬送されます。たいていは麻薬金庫の上、もしくは中央のテーブルにあります。見当たらない場合は、ナースに確認してください。

 麻酔終了後は、コントロールルームの麻酔台帳入力用パソコンの右隣にある黒いかごに入れてください。このカルテはNsとの共用になります。無断で手術室外に持ち出さないようにお願いします。

3. 麻酔準備

1)担当患者さんの手術室は、コントロールのホワイトボードで確認できます。入室予定時間の20~30分前に準備を始めます。まず、麻酔記録用紙を準備します。麻酔記録用紙は、電子カルテの「文書→同意書等→麻酔科」の中にありますので、印刷して使用してください。患者さんの入室前に記入できる部分は記入しておきます。

2)麻酔器のチェックを行います。麻酔カルテ内に綴じてある「麻酔器の始業点検」のチェックリストに沿って行います。(別項参照)

3)喉頭鏡と挿管チューブのチェックを行います。どちらも麻酔カートの上に準備されています。喉頭鏡は組み立てて、ブレードを開き、電球がつくか、暗くないかをチェックします。調子が悪いときは、CEさんに声をかけてください。挿管チューブは、指示したサイズであることを確認してから開封します。カフを20mlほどの空気で膨らませ、リークがないことを確かめます。その後、カフを完全に脱気し、カフ部分に少量のカテゼリーを塗布します。予備のブレード、カテゼリー、スタイレットは麻酔カートの上段の引き出しに入っています。スタイレットを使用する場合は、スタイレットを一度酒精綿で清拭し、ゼリーを少量塗布してから挿管チューブに通します。先端がチューブ先から出ない位置で固定し、ホッケースティック上に曲げておきます。

4)麻酔薬、輸液を確認します。指示した薬剤はNsがシリンジに用意してくれていますので、薬品名、希釈法などに間違いがないことを確認してください。輸液は、製品名を確認し、点滴セット内にエアーが残っていないか確認してください。

5)吸引を準備します。吸引ホースに手を当て、吸引されることを確かめてください。

4. 麻酔終了後

 麻酔カルテ、麻酔記録用紙、心電図はコントロールルームに持ち帰ります。手術中に使用した麻薬伝票と麻薬残薬はNsが片付けますので、麻酔カートに残しておいてください。

 終了後には、1.手書き麻酔台帳の記載、2.麻酔科用PC麻酔台帳への入力、3.麻酔科用PCへの麻酔記録スキャン登録、4.電子カルテへの麻酔記録スキャン登録、5.電子カルテへの麻酔要約記載、6.使用薬剤のコスト表記入の6つの作業を行います。

1)麻酔台帳(手書き)を記入します。麻酔記録の左上に、台帳に記載されている麻酔番号を記入してください。心電図は、術前回診用紙の裏に貼ってください。

2)麻酔科用PCの麻酔台帳(桐)を入力します。デスクトップの麻酔台帳2008をダブルクリックし、開きます。パスワードを聞いてきますが、無視してEnterを押してください。項目に沿って入力します。手術部位分類がわからないときは、指導医に聞いてください。

3)麻酔科用PCに、麻酔要約、麻酔記録、術前回診用紙、手術申し込み表をスキャンします。文書名は、麻酔番号が001番なら「20080001」のように入力して、保存します。

4)麻酔記録用紙を電子カルテにスキャン登録します。スキャナ登録→文書種類:手術関連→一覧表示:手術記録用紙で取り込んでください。手術記録用紙を1枚印刷し、原本は中央テーブルの本間主任の机の左下の引き出しに入れます。印刷したものは、穴を開けて麻酔カルテに綴じます。

5)麻酔要約を記入します。「診療記録→テンプレート→科別:麻酔科:手術記録→麻酔カルテ→麻酔要約」で開きます。

6)麻酔コスト表へ麻酔科で記載する部分は、酸素、空気、セボフルランなどの医療用ガス、揮発性麻酔薬の使用量です。
医療用ガスの計算:麻酔記録用紙にL/minで記載されているので、流量と時間から計算してください。
揮発性麻酔薬の計算:セボフルランの場合下記の計算式で算出します。

 3.3×(%)×医療用ガス総流量(L/分)×(分)/60
              *3.3はセボフルランの固定係数です。

たとえば、2%のセボフルランを酸素2L/分、空気2L/分で5分間使用した場合、
3.3×2(%)×(2+2)(L/分)×5(分)/60
 =1.1×3×2×4×5/60
 =1.1×2(mL)(つまり、4Lで使用すれば5分間でSevo%×1.1mLの使用量)
となります。

7)麻酔終了後に時間があれば、病棟に出向き、もう一度呼吸状態、創痛の程度などを観察します。

5. 一日の終わりに

 翌日に麻酔が当たっていれば、麻酔診察記録を元に情報収集をし、患者さんの年齢や合併症、要望などを考慮しながら麻酔計画を立てます。また、担当患者さんのもとへ出向き、ご挨拶をしておきます。開口状態、聴診などの診察もさせて頂くとよいでしょう。術前問題リストに見落としがないか、十分に確認してください。

 前日に担当した患者さんの術後経過(鎮痛、全身状態など)を見に行きます。術前、術後とも、何か問題があれば、上級医に報告、相談してください。
 担当症例が術後ICUに入室した場合は、ICU担当医とともに術後管理を行います。

6. 指導医

 研修中は、責任を持って指導に当たる指導医が必ず一人つきます。しかし、旭川一条通病院や苫小牧病院への出張麻酔があるため、日によっては指導医が不在となることがあります。その場合は、基本的にその日に麻酔を一緒に担当する医師が指導に当たります。

 麻酔中は、麻酔科医師が1名必ずそばについていますので、いつでも質問、相談などしてください。麻酔中以外のときは、体制表を確認してからPHSでcallしてください。外来、会議中はすぐに対応できないことがあります。急ぐ場合は、当日のスーパーバイザーに聞いてください。

7. 臨時手術

 臨時手術には積極的に参加してください。Poor risk患者の麻酔管理を学ぶことが出来ます。夜間・休日の臨時手術に呼び出しを希望する場合は、当日の麻酔科待機医師に直接伝えるか、手術室医師控え室の白板に、名前と呼び出しを希望する日を書いておいて下さい。

8. 研修の目標と到達度のチェックリスト

 研修を開始して2週間以内に、麻酔科研修で学びたいこと、期待することなどをまとめ、研修の目標として提出してください。目標については、提出後、1ヶ月目、2ヶ月目に指導医とともに確認し、振り返りを行います。

 また、2週目、4週目、6週目にチェックリストによる研修評価を行います。各週のチェックリストはそれぞれ3回評価を行うことができるように作成されています。研修の状況によって、決められた週以外にも使用してかまいませんので、積極的に利用してください。各自で自己評価を記入した上で、指導医に提出し、評価をもらってください。

9. 手術に当たっているときの昼食

 手術中は、基本的に手術室から出ることはできません。昼にかかる手術の場合は、昼休憩中も、患者さんの急な変化にすぐに対応できるよう、なるべく医師控え室で昼食をとっていてください。売店で食券を買い、朝10時までにコントロールルームの食券入れに入れておくと、11:30頃に医師控え室へ昼食を配達してもらえます。メニューの在り処は師長さんに聞いてください。B定食は麺類のため、配達はカレーになります。

10. 参考文献

 研修2ヶ月間に、麻酔成書を一冊通読することを強く奨めています。臨場感を持って教科書を読むことができるでしょう。

 成書、雑誌は、医師控え室の棚にいくつかそろえてあります。持ち出す場合は、「貸し出し帳」に書名と名前、日付を記入してください。返却後には、返却済みチェックを入れてください。
 ICUにも集中治療、感染対策などの教科書、雑誌が揃っています。借りる場合は、ICU担当医に声をかけてください。

 雑誌は図書室で探すか、MDconsultで検索できます。

◆麻酔関係の雑誌:
 LiSA (医師控え室にあります)
 麻酔、臨床麻酔、ICUとCCU
 Anesthesia&Analgesia
 Acta Anaesthesiologica Scandinavica
 Anethesiology(HPで閲覧、ダウンロード可能)など
 
◆成書:
 麻酔科学ベーシック (メディカル・サイエンス・インターナショナル)
 ミラー麻酔科学   (メディカル・サイエンス・インターナショナル)
 麻酔科シークレット  
 他、学生時代に使用されていたもので良いと思います。

◆マニュアル:
 コンパクト研修医マニュアル 若い医師のための麻酔科学 (ベクトル・コア)
 イラスト麻酔科学 (文光堂)
 麻酔科研修チェックノート (羊土社)
                          などなど
また、各先生の机にもさまざまな本があります。借りる場合は、メモを残しておいてください。

11. 木研会

 毎週木曜日の医局会議終了後(第3木曜は合同木研会)、管理棟3階の小会議室(病院機能評価更新対策事務局)で抄読会と、議題があればその討議、連絡などを行います。研修の先生は月に1回程度抄読を行ってもらいます。英語文献のうち、興味を持ったものでかまいませんので、10~15分程度で発表できるようにまとめてください。何を読んでいいのかわからないときは指導医に相談してください。

12. 空き時間

 予定手術が中止になった場合、担当症例がない場合など空き時間ができたときは、他の先生の麻酔やICUの見学、勉強などに使ってください。
 午前中は、術前診察や外来を見学することができます。積極的に見てください。朝カンファレンスのときに、外来担当医に相談してください。

13. 当直明け、健診などで麻酔科研修に入れない日、指定休、年休などは、手術室医師控え室の白板に記入してください。


「勤医協麻酔科研修の手引き 第6版 総論」



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